夢にも思わなかった

今日の一曲=The Gospellers「いろは」

宮部みゆきの「夢にも思わない」が読み終わった。前作の「今夜は眠れない」は中学生である主人公の描写が相変わらずうまいなあとは思ったもののそこまでおもしろいとは思わなかったんだけど・・・。2作目を読み終わって根本的に考え方を間違えていたのかなと思う。

2作とも読み終わった感想としては1作目は2作目をおもしろくかつ深く読むための長い前置きだったように思う。2作目では主人公よりむしろ親友島崎の行動の方がポイントとなる。結構あれやこれやと暗躍するけども、この辺の行動パターンは1作目の知識がないと読み取りにくいように思う。島崎の行動が本来ならあり得ないということも1作目があってこそ。

そのせいか1作目は内容としてはかなり淡泊な物に感じた。さほど重大な事件が起きるわけでもなく、緊迫したシーンが続くわけでもないし。2作目は立派なミステリーに変貌している。最初に殺人事件がおき、主人公がそれに関わり、警察や探偵ではないものの少しずつ事件の核心に近づいていくのはまさにミステリー。そこに主人公の恋愛話なども加えてバランスが良く読みやすい。

主人公自体はどっちかというとストーリーテラーで特におもしろみのないキャラともいえるが、宮部みゆきの中学生の描写はかなり絶妙でいい感じなので、それが堪能できるという意味ではかなり良い感じ。今時こんな中学生がいるとは思えないけど中学生の思考、行動パターンという意味ではわかりやすいと思う。

2作とも、雰囲気としては非常に暖かい。事件等は起きるけどそこまで殺伐としているわけでもなく。事件内容とかを考えると結構リアルな内容にも思う。決してつまらないわけではないからほのぼの系の作品を読みたいときにおすすめ。

関係ないけどこの前に読んだ小野不由美の「魔性の子」と続けてマスコミに主人公が壊されかけるのだったというのはちょっときつかったかも。この後は無事に発掘に成功した宮部みゆきの「理由」を読みます。